Q&Aコーナー

2002年10月の当サイト開設以来、皆様方から大変多くの質問メールをいただいております。今回はその中から内容が一般的で技術的な質問を一部紹介させていただきます。


Q&A 1: ワインディングマシーンの磁気について

[ 質問 ]

 ワインディングマシーンを購入しようと思っているのですが、ワインディングマシーンの動力に、モーターを使っていますので、磁気が有りますよね。そこで時計は帯磁しないでしょうか?
 また、ワインディングマシーンの中には一応、帯磁についてうたっている商品もありますが、高額なので迷っています。一般に売られているものでも(1~2万)大丈夫なものでしょうか?

[ 回答 ]

 ご存知の通り、ワインディングマシーンは何種類か市販されています。それらの磁気についてですが、回転源は一般的なモーターを使用しており、発生している磁界のレベルは極わずかですので、ウオッチへの影響はほとんどないと考えられます。

 磁気よりも巻き上げ効率に問題があるようで、自動巻の機械式ウオッチの場合は、その個々のウオッチのメカニズムにより巻き上げ度合いが異なりますから、個々のウオッチの仕様とワインディングマシーンとの相性を良く確認する必要があります。また、自動巻の機械式ウオッチの場合は大抵大丈夫ですが、一般的にワインディングマシーンは低速で回転させますので、SEIKOのキネティックなどのように回転錘に大きな角速度を必要とする自動巻発電のクオーツウオッチには不向きです。




Q&A 2: ワインディングマシーンを使うと機械は消耗しますか?

[ 質問 ]

 ワインディングマシーンで四六時中、時計を回しているのは、機械の消耗になるので良くない、と聞きましたが実際の処はどうなんでしょうか?

[ 回答 ]

 機械の消耗についてですが、判断する為に幾つかのポイントが挙げられます。

 まず、機械が「止まっている状態」と「動いている状態」とを比較をする場合、これは消耗になると言えます。機械式時計が動いている状態では、一連の歯車に対して常に負担が掛かっています。ですから、もしかしたら、その話が単に「時計を動かし続ける」という意味だったのかもしれません。

 つぎに、ワインディングマシーンがぜんまいを全巻き状態からさらに回転して巻き上げていく、という意味に捉えますと、それが直接、機械の消耗になるということはありません。これはスリッピング・アタッチメントと呼ばれるような機構、つまり巻き上げすぎてぜんまいを切断しないように、巻き上げ完了状態以降は香箱の中のぜんまいの外端部が空回りしてぜんまいを守る、といった機構を通常の機械式時計が持っているためです。ただし、全巻き状態というのは最も動力が大きい状態ですので、極端な話をすれば、24時間365日時計を回し続けると、機械は常時最も負担の大きい状態にありつづけることになります。このケースでは機械の消耗になると言えます。

 と言っても、これはあくまで極端な話ですし、腕につけて使用する場合も、全巻き状態を長時間保つと考えられますので、実質大差はありません。もし、この点が気になるようでしたら、お手持ちの時計とワインディングマシーンとの相性といいますか、全巻き状態に至るまでの時間等を測定されることをお勧めします。

 また、時計を腕に巻いて運動する場合と比べて、ワインディングマシーンはかなりゆっくり(丁寧に)時計を回します。ですから、「時計の扱い」と言う点からも、ワインディングマシーンの使用が機械の消耗に繋がるとはなかなか考えにくいです。




Q&A 3: セラミックス時計について

[ 質問 ]

 こんにちは、素晴らしいホームページを作って頂き、とても貴重な情報をありがとうございます。早速ですが、セラミックス時計についていくつか質問させて下さい。

 セラミックス時計のスポーツウォッチというとプロフェッショナル1000Mダイバー(外胴)、ランドマスターサウスポール、ランドマスター植村直己モデル、ランドマスターサガルマータ(ベゼル)等がありますが、その強度についてですが、大場氏のホームページより時計開発者の方の説明では、パラセール滑走中、時速40キロでコンクリートのような南極の氷上に転んで時計が叩き付けられても壊れないようにしたい。そのためいままで使用していたチタン製では実験により不可能となり、今回の南極ではセラミックス製となった主旨が語られておりました。(その時点では素材は、企業秘密としております。)金属の持つ靭性よりセラミックスの硬度を選択されたようですが、実際の使用に際しては、大場氏のような冒険中、そのような転倒をした場合、致命的な破壊はセラミックス時計のほうが受けるのではないでしょうか?(本体が割れる等)南極冒険旅行中(予備は持って行く様ですが)のような極限の状況で本当にセラミックス時計はその素晴らしさを発揮できるのでしょうか?またそのような転倒、衝撃に耐えられるのでしょうか?

 私は、植村直己モデル、1000Mダイバーを愛用しています。セイコーの説明書にはセラミックスを使用したモデルについての注意書きとして強い衝撃を与えたり落としたりすると割れる可能性があります。となっていて余計に不安を感じるのですが。(もちろんベゼルと本体の間にチタンを挟んで衝撃を逃がす工夫は知っております。)耐寒性についても-10℃から60℃までの携帯精度となっており通常のセイコークォーツと同様のようですが、南極では、もちろんそれ以下の気温になることと思います。(腕に直につけることを差し引いても)それらを踏まえたうえで真の冒険時計として使用できるのでしょうか? 実験結果、実使用データ、特殊機構等お教え下さい。あるいは、冒険時計としてもベゼルの表記、24時針の有無以外1000Mダイバーの方が上なのでは?という疑問も残ります。以上、生意気なようですが、疑問点を書き連ねました。よろしくお願い致します。

[ 回答 ]

 (実験データ等、具体的な数値について、残念ながらご提供できないことをあらかじめご了承ください)

 セイコーがプロスペックスに使用しているセラミックスは、セラミックスの中でも最も靭性に優れ、かつ高強度であるジルコニアセラミックスをベースに、更に強度アップを図った高靭性セラミックスです。この材料は「ばね材」としても使われている程、靭性が高く、下記のような特性を有しています。

 (1) 硬さがHv1100の超硬物質で傷がつきにくい。(ステンレスやチタンの約5倍以上)
 (2) 比重が6でステンレスの75%と軽量である。
 (3) 耐食性が極めて優れており海水などでは腐食しない。
 (4) 靭性が優れ、落下衝撃等にも強く、高強度である。
  (セラミックスとして最も一般的なアルミナセラミックスの約4倍の強度がある。)
 (5) 耐熱性が極めて高い。
 (6) 電気的に絶縁体である。
 (7) 非磁性体である。
 (8) 黒、グレー、ブルー、ブラウン等様々なカラー化が可能である。

 時計のケースやバンドが硬くて傷が付きにくく、鏡面の輝きが長期間持続することが特徴の超硬時計としては他にもWC(タングステンカーバイド)やTaC(タンタルカーバイド)などのHv1000を超える超硬合金を使用した時計も数多く市販されていますが、セイコーの高靭性セラミックスは上記の様に優れた機械的特性を有し、実験では他のWCやTaCの超硬時計よりも耐衝撃性は一段と優れていることが確認されています。

 ご存知の通りウオッチは生きた精密機械ですので、人間が生存できない程の苛酷な衝撃や極端な低温、高温、高圧、高磁界などに耐えられるものは存在しませんので、取扱説明書には必ず注意事項が明記されます。人間としての限界に挑戦されている大場さん達の極地での冒険・探検での使用実績や、市販してから今まで多くの方達に愛用して頂いているセラミックスのランドマスターではセラミックスが割れたり、欠けたりという問題は生じてはおりません。私は植村直己モデルと1000mプロフェッショナルダイバー、またチタンモデルのフライトマスターなどを使い分けていますが、どのモデルにも違ったスピリットがあり、それぞれに愛着があります。どうか末永くお使いのプロスペックスをご愛用下さい。




Q&A 4: 就寝時に時計は付けていて良いのですか?

[ 質問 ]

 初めまして
 いつも楽しく勉強させていただいております。

 ちょっと疑問に思ったのですが、寝ている時に時計は外さなければいけないのですか?
 機械式のクロノグラフを数本持っているのですが、お風呂に入る時以外は着けたままです。
 どのホームページを見ても答えがありません。

[ 回答 ]

 就寝時に時計を外さなければならない理由は「時計自身のために」としては何もありません。逆に就寝時に時計を着けて寝なければならない理由も「時計自身のために」としては何もありません。

 「就寝時に時計を着ける着けない」はその人の自由なわけですが、入浴時も含めて四六時中時計を着けている人もいます。一般的に言えることは下記の通りです。

 1)朝の目覚まし用にアラーム付き腕時計を利用している人は、就寝時は時計を着けて寝るか枕元に置いて寝る。
 2)夜中目が覚めた時に時刻を知りたい場合には就寝時にも夜光付き時計を着用する。
 3)じっと寝ていないで良く寝返りをうったりする活動人で、寝ている間も少しでも自動巻機構を働かせたい人は夜も着用したままでいる。
 4)朝が早起きで、起きてすぐ出かけなければならない生活の人は夜も着用したままでいる。
 5)時計も生き物なので、主人が寝ている時くらいは静かに休ませてあげたい人は、愛用の時計を外して眠る。

 こんなところですが、ご参考になれば幸いです。




Q&A 5: アラーム時計について

[ 質問 ]

 いつも勉強させていただいております。
 以下についてご教示いただきたく、ご質問させていただきます。

 端的にいって、「機械式で10~20万円程度のアラーム時計」ってほとんどみかけないのですが、これには理由があるのでしょうか?
 機械式クロノグラフは、それこそ数万円から数百万円以上まであらゆる価格帯でみかけますが、それに比してアラーム時計のバリエーションが実に少ないと、かねがね思っていました。
 私自身はといえば、クロノグラフ機能を実際に使うのは、せいぜい1年に数回なのに対して、(クオーツですが)アラーム時計は少なくとも1~2日に1回は必ず使用します。おそらくほとんどのユーザも実際にクロノグラフなんて使うことはないでしょう。一方でアラームは、会議や打合せ、待ち合わせ、終電、テレビ録画などなど様々な場面で大いに実用的なハズです。
 もっともっと機械式アラーム時計のバリエーションが増え、またユーザも増えていいと思われるのに、バーゼルフェアなどをみても、いつも高価なアラームが少々登場するのみです。
 なにか、比較的廉価なアラーム時計が少ない"技術的"な理由でもあるのでしょうか(例えば耐久性など)。

 なにかご存じでしたら、ぜひお教えください。

[ 回答 ]

 機械式のアラームは電子式のアラームと比較すると次の様な弱点があります。

 (1) 電子式は薄い圧電素子を裏ぶたに貼り振動させる方式が主体で、部品点数も少なく、サイズも小型・薄型が可能であるが、機械式の場合は金属片でケースを叩いて音を出すため、機構的に複雑となり、部品点数も増えてサイズが大きくなる。

 (2) 機械式の場合はアラームを駆動させる機構部の部品点数が多く、加工工数・組立工数などの製造コストが高くなるため時計としても高価格となる。

 (3) 電子式の場合は音の音色も単一でなく、周波数を変えて色々な音やメロディーを奏でることもできるが、機械式の場合は単一音で、色々な音色を奏でるのはオルゴール付きなどのポケットウオッチとしては可能であるが、サイズも大きく価格も高価となる。

 (4) 電子式の場合はアラーム時刻の設定は複数回可能であるが、機械式の場合は1回だけで、かつ鳴っている時間も短い。

 半面機械式のアラーム時計は、「電子音では出せない趣のある音色を奏でることができる」というメリットがありますので、「ミニッツリピーター」などのアラーム付きのコンプリケーションウオッチを昔から工芸時計・芸術時計のカテゴリーの嗜好品として愛用されている方達も多いです。




Q&A 6: ダイバーズ・ウオッチの防水性能について

[ 質問 ]

 はじめまして
 先日、セイコー1000m飽和潜水用防水時計を購入しました。
 流石に、チタン+セラミックはすさまじい出来です。
 世界最高のダイバーズ・ウオッチを入手出来、非常に嬉しく思っています。
 さて、1000mの防水性能ですが、実際の許容範囲は、何mまで設定してあるのでしょうか?
 耐久テストも過酷な条件でなされたと思いますが、その点も併せてご教示ねがえれば非常にうれしくおもいます。
 以上の件、宜しくお願いもうしあげます。

[ 回答 ]

 人間が潜水できる限界は、動物の実験などから約700m~1000mと言われています。この1000mプロフェッショナルダイバーはその挑戦人間の潜水限界用の特殊潜水時計です。他社製品に多い単なる水圧に耐えられる性能だけでなく、呼吸気体として高圧のHe+酸素混合ガスを用いる実際の1000mの飽和潜水に使用できる性能を有しています。

 水圧に対する防水性能は安全率を加味して、125気圧(水深1250m相当)の加圧防水性を保証しています。限界耐水圧は200気圧(水深2000m相当)を超える性能を有していることが、工場内の耐久テストや潜水調査船「しんかい2000」による実際の深海潜水テストにより確認されています。




Q&A 7: メンテナンスの頻度について

[ 質問 ]

 初歩的な質問で申し訳ございません。

 時計が好きで様々なブランドの時計をクオーツ、オートマティックに拘らず所有しておりますが、時計によってメンテナンスが必要になる時期が異なります。

 同じクオーツでも4年くらいメンテナンスしなくてもトラブルが無く使える時計もありますし、2~3年に一度の割合でメンテナンスが必要になるものもあります。

 ブランドによって回答がまちまちなのですが、一般的にクオーツの時計は2~3年に一度のメンテナンスが必要と考えて宜しいのでしょうか?また、オートマティックの時計は、どの程度の頻度でメンテナンスをすると、故障が少なく長持ちさせることができるのでしょうか?

[ 回答 ]

 いいえ、大変むずかしい質問です。結論から言うと明確なお答えが出来ません。が、このように理解していただければ幸いです。

 時計は生き物です。時計の中でも特に腕時計は、人間が腕に着けて使用する精密機械であると同時に装飾品としての使命もあるので、価格や性能・品質も様々あり、「創るメーカーの品質グレード」と「使うユーザーの使用状態」により大きく左右されます。

 「創るメーカーの品質グレード」の観点では、SEIKOの製品と他社のものでははっきり言って全く異なります。またSEIKOの製品の中でも、ブランドや価格帯により異なります。メカ時計とクオーツウオッチでもメンテナンスは全く異なり、同じクオーツでも、キネティックやソーラーウオッチなどの発電タイプのウオッチと、使いきり電池を使用しているウオッチとでも大きく異なります。千差万別の人間の健康管理が個々に違うのと同様に、毎年約15億個も世界で生産されているウオッチもその個々の製品によりメンテナンスは異なります。

 次に「使うユーザーの使用状態」により、メンテナンスの時期は大きく異なってきます。特に使用温度、衝撃、磁気、薬品(化粧品を含む)・水(特に汗や海水)との遭遇の頻度などに大きく左右されます。毎年きちんと定期検査をされているユーザーから、10年以上もメンテナンスせずに使用されているユーザーまで実に様々です。

 あなたの時計愛好度数は高く、数多くの時計を使い分けておられると思いますが、それぞれのウオッチの使用状態に基づいて個々の時計のメンテナンス期間を考えて下さい。答えはあなた自身にしか出せません。




Q&A 8: 機械式時計の振動数について

[ 質問 ]

 こんにちは,いつも楽しく拝見させていただいております.
 初心者のため基本的なことをお伺いさせていただきます.
 機械式時計の振動数についてですが,高振動数の方が低振動数のものと比べて精度は良いが,低振動数の方が耐久性があり故障も少なく安定していると聞きます.
 日常使用していても長年の経年劣化によって違いが出てくるものなのでしょうか.
 是非ともご回答のほどよろしくお願い致します.

[ 回答 ]

 てんぷを振動子とする機械式時計のハイビート(高振動)は、軸部の摩耗の観点から10ビート(てんぷ:5往復/1秒)が限界です。

 SEIKOでは昔10ビートのハイビート品を作りましたが、現在のSEIKOのハイビート品はロレックス等と同様の8ビートです。勿論、振動数を上げれば精度は安定しますし、軸部の油などのメンテナンスを確実に行えば長持ちしますから、高振動の方が性能面、時計の価値としては優れています。ハイビートは一般の5ビートの2倍も仕事をしているので同じ時間で比較すると機械的な部分は2倍の耐摩耗性が必要になります。

 私が愛用していた61系の10ビートのダイバーズウオッチやグランドセイコーはスポーツなどにも使用しましたが、メンテナンスを確実にしていますので30年経った今でも高精度で時を刻んでいます。




Q&A 9: 分針の合わせ方について

[ 質問 ]

 こんにちは、HP拝見致しました。
 早速質問なのですが。

 腕時計に於いての分針の合わせ方についてです。
 私が聞き及んだ話しによると、

 ※「クォーツは戻し合わせ、機械式は送り合わせ」

 ということでしたが、これは何故でしょう?
 ギヤの噛み合わせやその「遊び」に起因するとの事らしいですが、双方ともギヤを使っているハズで、何が違うのでしょうか?
 また、私の所持している機械式時計(ETA7750)は「送り合わせ」ではうまくいきません。
 よって、全てがこの※にあてはまる訳ではないと云う事も併せてお教え下さい。

[ 回答 ]

 時計の針を運針している歯車群(輪列)には「バックラッシュ」という「歯車と歯車との間の隙間=遊び」があります。時計の針の「送り合わせ」と「戻し合わせ」の違いは、時計の針を動かすエネルギーの伝達方向の違いに起因します。針を運針するエネルギーの伝達の方向が機械時計と水晶時計では正反対になっています。即ち、機械時計の場合はエネルギー源の「ぜんまい」がある香箱車(一番車)から二番車(分針が付いている車)、三番車、四番車(秒針が付いている車)と力が伝達されますので、「送り合わせ」として運針方向に針合わせすると歯車と歯車とが接した状態で遊びがなく針を正しく目盛に合わせることができます。

 一方、水晶時計の場合は運針のエネルギーは、駆動源のステップモーターのローターから五番車、四番車、三番車、二番車と機械時計とは逆方向に伝達されます。このため水晶時計の場合は「戻し合わせ」として、運針方向とは逆に戻す方向に針合わせすると歯車と歯車とが接した状態で遊びがなく針を正しく目盛に合わせることができます。

 上記の「バックラッシュ」の値は個々の時計のムーブメントで違いますので、あなたがお持ちのスイスETA社製のムーブメントの場合は、もともと「バックラッシュ」の値の設定が大きいか、歯車の摩耗や欠けなどに起因して隙間が大きくなっているために針が合せ難いことが考えられます。もし気になるようでしたら、そのメーカーのアフターサービス部門に問合わせをされた方が良いかと思います。




Q&A 10: ハイビートの油について

[ 質問 ]

 今回1級技能士の試験の防水について調べていたらここのHPにたどりつきました。大変参考になりました。
 今後も修理を続けていきたいと思っているのですが前から気になっている事がありまして。
 8振動はシントAを使っているのですが10振動もシントAでいいのでしょうか?
 いろんなHPを見ているとデニスのエルプリメロは特殊なオイルを使っていると書いていたので。
 昔セイコーに10振動があったのを思い出して当時は特殊なオイルを使っていたのかなと思いまして。
 よろしくお願いします。

[ 回答 ]

 時計油には次のような性質が要求されます。
 (1) 長期安定性があり、変質しないこと。
 (2) 粘度が小さいこと。
 (3) 拡散しないこと。
 (4) 化学的に安定で、金属と化合しないこと。
 (5) 低温での安定性があり、温度変化による粘度変化が少ないこと。
 (6) 蒸発しないこと。
 (7) 強圧力、低速度で油膜が切れず、摩擦係数が小さいこと。

 一般的な使用条件においては、上記の特性を満足する非常に安定した油としてMOEBIUS社の「SYNT-A-LUBE」が使われています。

 SEIKOの代表的な機械式ムーブメントでは10ビートキャリバーの61系ハイビートムーブメントなども含め、てん真および表輪列のほぞ、筒車、日の裏車、ボールベアリング、自動巻伝え車、カレンダー部など、各種ぜんまい・ピン・レバー用(グリース使用)や切替機構部以外のほとんどの部分に「SYNT-A-LUBE」(コード:9010)が使われました。

 その他の油として、爪石用や、冒険・探検用の特殊な極低温用途やクロノメーター商品などには、上記の特性の特に(5)と(7)が優れている「SPECIAL OIL」(コード:9040、9030、8010、8050、921など)が使われたことがあります。





Watch @ go go 誌での回答編

Q&A 1: 気圧計付き時計について

[ 質問 ]

 多機能を搭載したデジタルウオッチが大好きなので、集めている時計はセイコーやカシオ、シチズンなどが大半です。本格的なアウトドアに限らず、ちょっとした外出でも、クロノグラフや方位、気圧などを計測して楽しんでいます。ところで、この気圧計なのですが、いったいどうやって割り出しているのでしょうか。そのシステムをぜひ知りたいのです。どうか、教えてください。よろしくお願いします。

[ 回答 ]

 セイコーの気圧計付き腕時計には、超小型でありながら、高精度の半導体圧力センサーが使われています。昔からある機械式で気圧を計測する場合は、圧力を感知するダイアフラムに加わる気圧の変化にともなう変位を機械的に検出し、歯車で変換し指針で表示しますが、この半導体圧力センサーを用いる方式は、シリコン結晶でできた薄膜ダイアフラムに加わる圧力が変化すると、電気的抵抗値が変化する性質(ピエゾ抵抗効果)を利用し、電子的に計測し表示します。このため、アナログ表示として指針で表示したり、デジタル表示として液晶で数値表示をすることができ、機械式に比べ精度が高く、耐久性に優れているのが特徴です。気圧計付きの場合、高度と気圧の間には一定の関係があるので、大きな気圧変動がない場合には、高度計としても使用することができます。高度表示がある回転ベゼル付きの腕時計では、高度補正が可能で登山活動には大変有効です。また、水深計付きの腕時計の場合も同様の半導体圧力センサーが使われています。




Q&A 2: 耐衝撃時計について

[ 質問 ]

 機械式ダイバーズウオッチの耐衝撃性について質問です。機械式ダイバーズ(他のスポーツウオッチでもいいのですが)の耐衝撃性はどの程度まで高めることができるのでしょうか?「スポーツウオッチ」といいながら、実際には、ゴルフや野球をするときには使えない(はずしてしまう)訳ですよね。何か変な感じがするのですが?特殊時計のエキスパートでいらっしゃる徳永先生、教えてください。

[ 回答 ]

 ダイバーズウオッチの耐衝撃性については、ISO(国際標準化機構)規格及びJIS(日本工業規格)において、耐衝撃時計(Shock-resistant Watch)であること、即ち1mの高さからの自由落下で受ける衝撃に耐えることが要求されています。1mから自由落下した際の衝撃速度はV=4.43m/sとなり、衝撃加速度の値は衝突する相手の材質で大きく異なりますが、ISO及びJIS規格で定められている材質(四ふっ化エチレン樹脂)の場合は、約4000~5000G(重力加速度の約5000倍)もの大きな衝撃が加わることになります。普段の生活で生じる衝撃加速度は、手をたたいたり、家具の上に置く程度で約10~50G、家具やドアにぶつかった場合で約50~200G、ゴルフや野球などのスポーツでは一般的には約100~数百G程度ですので、耐衝撃性の点では約5000Gの衝撃をクリアしている本物のダイバーズウオッチであればどんなスポーツでも使えます。
 私は若い時に野球・卓球・庭球・ゴルフなどの球技をしていましたが愛用のSEIKOダイバーズウオッチを何時も左手に着用していましたので、品質・性能については約30年間の実績があります。一般のスポーツウオッチでも耐衝撃時計となっているものもありますし、軽スポーツ程度でしたら強化防水仕様の一般的なスポーツウオッチでも安心してご使用頂けます。




Q&A 3: 夜光時計について

[ 質問 ]

 いつも楽しく読ませていただいて、勉強しています。早速ですが、夜光塗料について質問があります。文字板の暗闇での視認性を高めるために、インデックスや針に夜光塗料を塗ってある場合がありますが、この「夜光塗料」とは具体的に何を指すのでしょうか?もうひとつ、「蓄光」という言葉も聞きますが、この二つの違いと成分物質を教えてください。また、「トリチウム」という物質もよく耳にしますが、これは「夜光」と「蓄光」のどちらですか?デジタルウオッチの場合、バックライトで下から液晶を浮かび上がらせますが、いちいちボタンを押さなくてはいけません。それに比べて、夜光は何の操作もしなくても暗闇ですぐに時刻が読み取れるのでとても便利です。ただ、時計によっては、夜光塗料が塗ってあるはずなのに、暗闇でぜんぜん光らないものがあるのですが、なぜでしょうか?ボクの使い方が間違っているのでしょうか?ぜひご教授ください。

[ 回答 ]

 夜光塗料は「夜間や暗闇で光る塗料」として、暗い環境でも使用する必要のあるダイバーズウオッチ、アドベンチャーウオッチや一般のスポーツウオッチ等に使われており、類語として発光塗料、蓄光塗料、蛍光塗料があります。
 蛍光塗料はエネルギーが与えられている時だけしか光らないので、この塗料だけでは時計の文字板や針には使えません。時計に使われている夜光塗料は「自発光性夜光塗料」と「蓄光性夜光塗料」の2種類に分類されます。「自発光性夜光塗料」の方は「トリチウム」または「プロメチウム」という放射性物質を使用し、その放射線エネルギーを利用して発光のもととなる硫化亜鉛が何年間も光を放ち続けることができます。しかし、1個の時計に使用できる放射性物質の量は限られており、また放射線エネルギーは減少していきますので、10年前後使用された時計の場合はかなりエネルギーは弱くなり、塗料も光らなくなってきます。
 「蓄光性夜光塗料」の方は、時計から漏れると危険性がある前記の放射性物質を一切含まないので無制限に使用することができ、光があたらなくなっても数時間は光り続けることができる安全性を重視した発光塗料です。蓄光性夜光塗料の場合は、光の照射が絶たれた後も、りん光(残光)により長時間発光を続けることができ、昔の蓄光塗料は短時間で見えなくなりましたが、現在各時計メーカーが使用している長時間残光の高性能蓄光塗料の場合は、一般的な生活環境(約500ルクスの照度で10分間光が当たる条件)から暗闇に移行した場合、一般的なもので約3~5時間、ダイバーズウオッチやアドベンチャーウオッチ等に使用するハイグレードのものは約5~8時間位も暗闇で時刻を判読することができるものです。また、劣化が少なく、光さえ当たっていれば何回でも繰り返して長年の使用ができるもので、時計としては理想的な発光塗料です。
 日本の時計メーカーは3年位前から放射性物質を使用する「自発光性夜光塗料」を全廃し、安全性の高い「蓄光性夜光塗料」に全面的に切り換えました。




Q&A 4: 時計の時間精度について

[ 質問 ]

 最近、初めて機械式(自動巻)の時計を買った者ですが、早速、質問があります。私の時計は若干進み気味で、1週間で5分くらい進むことがあります。先日、時計に詳しい友人から、機械式時計は、進むのはいいが、遅れるのは調子が悪い証拠で、即オーバーh-ルが必要だと聞きました。それを聞いて、心配になってしまいました。まだ、買ってから1ヵ月しか経っていません。本当に大丈夫でしょうか。その友人いわく、メーカーにもよるが、時計は多少進むのはいいが、遅れるのは消費者が許さないから、はじめから進み気味に調整されているそうです。本当のところを教えてください。

[ 回答 ]

 1秒間に2.5~5回往復振動(5~10ビート/秒)する「てんぷ」の振動を時間基準とする機械時計の場合の精度は、一般品で1日に±20秒程度、高精度品でも1日に±5秒程度は誤差が生じます。これは1秒間に約3万~20万回も往復振動する「音叉型水晶振動子」の安定した振動を時間基準とし、1か月に数秒、ないし1年に数秒しか狂わない水晶時計の場合と比較すると、時間基準となる振動子の振動数が桁違いであることが第一のポイントです。
 第二に機械時計の精度は、てんぷの振動に影響を与える「時計の姿勢」、「ぜんまいトルク(巻かれている状態)」、「振動や衝撃」、「温度差」などの誤差を生じる要因が水晶時計に比べて数多くあり、また歯車・軸などの回転部の摩耗や潤滑油の状態変化など、時間経過や使用状態の違いにより、水晶時計に対して精度の狂いの度合いが大きくなることがあげられます。
 時間の遅れは社会生活で問題ですので、時計の精度は安全側の若干進む方を中心として調整され、高精度品のクロノメーター規格でも、許容精度範囲はプラス側にシフトした基準となっています。特に、機械時計の場合は狂う要因が上記の様に沢山ありますので、高精度品のクロノメーターでも使う際の注意が必要ですし、末長く愛用するための時間精度の維持には定期的なメンテナンスは欠かせません。




Q&A 5: クロノグラフについて

[ 質問 ]

 クロノグラフを10本持っています。私は全てのクロノグラフを動かしております。しかし、電車のつり革などでほかの人のクロノグラフを見ると、止めている人が多いですね。そこで質問ですが、止めている場合はストップボタンで止めておくのと、リセットボタンで止めておくのでは、違いがあるのでしょうか?私は動いてこそ機械であると思っているのですが、ショップの人にストップ、リセットを繰り返すのはよくないと言われました。動かしすぎて壊れることがあるのでしょうか?

[ 回答 ]

 クロノグラフの時計が機械式か電子式かで異なってきますが、クロノグラフのメカニズムは、機械式の場合、クロノグラフ秒針が運針している時にストップボタンを押すとレバーが作動し、秒クロノグラフ車にブレーキをかけて停止させます。この状態ではクラッチが解除されますので、ぜんまいからのエネルギーの伝達は無くなっています。さらにリセットボタンを押すとハート形をしたカムが作動し、クロノグラフ秒針を瞬時にゼロ位置にリセットさせます。リセットするエネルギーは指でボタンを押す力によっているので、ぜんまいのエネルギー消費の点ではストップボタンを押した状態とリセットボタンを押した状態での差違はありません。スタートボタンを押すと再びクラッチが噛み合い、クロノグラフ秒針が運針することとなりますが、ぜんまいのエネルギーは消費されていきます。
 時計の耐久性の観点では、機械部品は摩耗や損傷が気になりますが、ボタン部、レバー部、クラッチ部、カム部、各クロノグラフ車などの歯車類の耐久性は、ユーザーの使用頻度・条件により異なりますが一般的な使用条件での耐久性能は確保されています。
 一方、電子式の場合は、各クロノグラフ針は独立したモーターで駆動され、各ボタンの操作によりCPUで電子的に制御され、各クロノグラフ針の運針、停止及びリセットがコントロールされます。従って電子式の場合は、ストップ状態からリセット状態への移行にはモーターが回転し秒クロノグラフ車、分クロノグラフ車などを動かすので電池のエネルギーは消費されます。電子式の場合の耐久性については、電子部品を除いたボタン部、スイッチ部、モーター部、歯車類は機械的なので、その耐久性は機械式と同じです。
 クロノグラフは「時刻」だけでなく「時間」も計れる優れた機能を有していますが、機械式、電子式いずれの場合も無駄に駆動エネルギーを消費させないで、普段は「時刻」表示のみでゼロ位置にリセットさせ、「時間」を計りたい時にすぐにスタートボタンでクロノグラフ秒針を動かして使用するのがクロノグラフの標準的な使用形態と思います。




Q&A 6: 電磁波影響について

[ 質問 ]

 いつも楽しく読んでいます。実は最近、すごく気になっていることがあります。それは、携帯電話の電磁波が時計にどんな影響をあたえるか?ということです。僕はいまクオーツと自動巻の機械式時計を使っているんですが、やっぱり携帯電話に近づけたり、一緒に置いたりしないほうがいいのでしょうか?メーカー側として何か電磁波対策をしているのでしょうか?また、自己防衛策として、どんなことに気をつけたらいいかも合わせてお教えください。クオーツ、機械式時計それぞれについてお願いします。

[ 回答 ]

 電子機器の電磁波に関する課題については、EMC(Electromagnetic Compatibility=電磁波適合性)の規格があり、①「イミュニティ=外部からの電磁波(静電気放電を含む)により製品が受ける影響」と、②「エミッション=製品から出る電磁波が外部に与える影響」が課題となります。
 時計の電磁波に関する課題については、機械式ウオッチの場合は、全てが機械的部品で構成されており、電磁波の影響を受ける部品はないので問題はありません。
 クオーツウオッチの場合は、多くのパーツが電子部品で構成されているので、①と②の両方が課題となります。①のイミュニティについては、時計のIC(集積回路)などの電磁波・静電気放電の影響を受ける部分に対策が講じられており、一般的な日常生活で遭遇する電磁波には耐えられるよう配慮されています。
 ②のエミッションについては、電波を飛ばすなどの強い電磁波を発生している特殊な時計を除いて、一般的な時計から発生する電磁波はごく僅かで、他の電子機器への影響はないことが確認されております。
 携帯電話の時計への影響は、磁気(直流磁界)の方が問題となります。JIS(日本工業規格)の「耐磁時計」の規格には、折畳み式携帯電話から発生する直流磁界は密着状態で約80000A/m、1cm離すと約6000A/m、5cm離すと約400A/mとのデータがあります。時計が「耐磁時計」であり、16000A/mに耐えられるレベルの「強化耐磁時計」であれば1cm以上携帯電話から離して使用し、4800A/mに耐えられるレベルの「耐磁時計」であれば5cm以上離して使用する必要があります。「耐磁時計」ではない時計の場合は、さらに離しておく必要があります。時計の耐磁性については磁気作用により駆動するステップモーターを用いるアナログクオーツウオッチよりも、磁気作用を用いない機械式ウオッチの方がはるかに強い磁界に耐えられるので、特殊ウオッチとして携帯電話と密着状態の80000A/mレベルに耐えられる機械式ウオッチが市販されています。最近の携帯電話の発生する磁界は小さくなるように改善されてきているようですが、ご使用の携帯電話から発生する磁界のレベルを確認しておいた方が安心です。
 いずれにせよ、磁気シールド機能があるカバーにでも入れない限り、強い磁界を発生している携帯電話などの電磁気製品と一般的な仕様の時計を密着させるのは禁物です。  




Q&A 7: 自動巻について

[ 質問 ]

 いつも楽しく読ませていただいています。早速質問があります。私は複数の時計を持っているのですが、どうしてもひとつひとつの時計を腕に着ける時間が短くなりがちです。ほとんどの自動巻時計は手でりゅうずを巻いてぜんまいの巻き上げ不足を補うことができますが、その場合でも手巻時計のように"毎日同じ時刻に目いっぱいまで"巻くのが好ましいのでしょうか?どうか教えてください。ちなみに、私はブライトリングのクロノマットとセイコークレドールパシフィークのふたつを主に使用しています。

[ 回答 ]

 時計を複数使用する場合は、①「正しい時刻表示を維持するための針合せの必要性」と、②「時計を駆動させるエネルギーの補給の必要性」が主な課題です。機械式ウオッチは香箱車に巻かれた「ぜんまい」のほどける力が「ぜんまいトルク」として輪列の一連の歯車を駆動させて各針が運針しているので、「ぜんまい」の全巻き状態とほどけた状態での「ぜんまいトルク」変動による時間基準となる「てんぷ」の振動数変化のため時間精度に誤差が生じます。時計の公的規格(ISO及びJIS)の時間精度測定では、「ぜんまい」の全巻き状態の直後ではなく、「ぜんまいトルク」が安定する全巻き状態から1時間後の時点で歩度測定を行う基準としています。
 機械式ウオッチの時間精度への影響は、他にも温度差、姿勢差、衝撃など多々ありますが駆動エネルギーの補給は最重要で、①の課題の時間精度への影響が少ないよう、「ぜんまいトルク」の変動が少ない状態を維持するのが理想的です。運動量が多い人で常に自動巻機構が作動し、「ぜんまい」が常に巻かれた状態で使用する場合は問題ないですが、運動量が少ない人は、その人が自分で管理し易い特定の条件により手動で巻き上げるとか、使わない時には市販の自動巻き上げ機で巻き上げておくとかの、ユーザー独自の駆動エネルギー補給の工夫が必要になってきます。
 ①の課題の時間精度を重視する場合は、パワーリザーブインジケーター付きの時計が理想的で、②の課題がチェックし易くなります。今、お使いのクレドールのパシフィークシリーズにはパワーリザーブインジケーター付きのクロノグラフがあり、私もキネティックと複数使用していますがとても便利です。
 自動巻ウオッチの駆動エネルギー補給の工夫として"毎日同じ時刻に、目いっぱいまで巻く"というのも管理し易い一つの手段ですが、手巻機構のない自動巻ウオッチもあるので、その自動巻ウオッチのパワーリザーブが何日間(一般的には2~3日間、特殊モデルで8日間)かという点と、何時間の携帯で全巻き状態になるか、又は1日の平均的運動による巻き上げで何時間持続するかを測定し"自己インジケーター"として把握しておき、その日の運動量に応じて効果的な駆動エネルギー補給手段を講じるのが得策と思います。